バイデン米大統領は20日からの韓国、日本歴訪に合わせ、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を表明する。
インド太平洋地域にはTPPのほか、今年1月に発効した日中韓など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)といった大型自由貿易協定(FTA)が複数存在するが、いずれも「米国抜き」の枠組みだ。
バイデン氏が大統領就任後初めて訪問する日本でIPEFの発足を宣言し、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱で低下した米国の求心力を早期に回復させると思いが強い。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を申請する中国をけん制する狙いもある。アジアでの米中の覇権争いが激しくなる。
IPEFは(1)貿易(2)サプライチェーン(供給網)(3)インフラ・脱炭素(4)税・反汚職―の4本柱で構成される。従来のFTAのように参加国が互いに関税を引き下げる市場開放には踏み込まない。米国は日韓のほか、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどの参加を見込む。
米国は経済安全保障の観点で中国への過度な依存から脱却するため、民主主義の価値観を共有する日韓などと共に貿易・投資上の共通ルール設定を目指す。
ただ、市場開放という魅力に欠けるIPEFに、東南アジア諸国連合(ASEAN)などには、TPPと違って関税の引き下げに踏み込まないことを疑問視する声がある。期待する米国の市場開放につながらない懸念があるためだ。米国でのビジネス拡大を期待する東南アジア諸国にとってはメリットに乏しく、新たな経済圏構築は前途多難だ。
中国は、日本やオーストラリアなど多くの国の最大輸出先だ。中国はTPPへの加盟を申請し、日中韓が加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も発効した。東南アジア各国は中国に警戒感を抱きながら、経済的には依存する部分も大きい。それだけに米国に単純には同調しにくい。
バイデン政権の経済政策は2国間の対中政策をいまだに策定しておらず、IPEFの位置づけが曖昧だ。米国内では「IPEFは紳士協定のような形になるだろう」(米通商関係者)との見方が根強い。
中国の王毅外相は5月16日午後に韓国外交部(省に相当)の朴振(パク・チン)長官と遠隔で会談し「反中連帯」と呼ばれるIPEF参加を決めた韓国政府の方針について「反対する」と明言した。
王毅外相はさらに「中国の巨大な市場は韓国の長期的な発展のために引き続き推進力を提供するだろう」とも述べた。この言葉を逆に解釈すれば、「韓国が米国の中国けん制路線に従った場合、中国の内需市場で不利益を被る」という一種の脅迫になる。
18日、王毅外相は日本の林芳正外相とテレビ会議の形式で会談した際、「日米の二国間協力が陣営間対立を煽るようなことがあるべきではないし、ましてや中国の主権・安全保障・発展上の利益を損なうべきではない。日本側が歴史の教訓を汲み取り、地域の平和と安定に着眼し、必ず慎重に行動することを望む。他国のために火中の栗を拾うべきではない」と指摘した。
IPEFがどう機能するかは見通せない。
(中国経済新聞)