コロナの急襲を受けて1か月以上も静まり返っている上海。現地にあるテスラの工場もこの影響をかぶり、連続20日間以上も操業を停止してしまった。
この影響は甚大だった。2021年、テスラ全社の半分以上を生産し、目下最大の設備を誇る上海工場は、世界での販売台数を150万台近くとするという2022年の目標達成に向けて、かなめとなる存在である。
テスラは計画の実行に向け、地元政府の承認を得て4月19日にとりあえずの操業再開を果たしたが、従業員の3人に2人が自宅隔離ということでフル生産は不可能、コロナ前の生産を回復するのは到底無理な状態であった。
また一方、サプライチェーンも不安定であり、1社でも問題が起きればテスラの生産にも支障が生じてしまう。
しかしテスラからすれば、操業停止による悪影響の方が深刻であり、再開に踏み切らざるを得ない状態だったので、苦しみながらも前進するしかなかった。
工場内には宿泊施設などがないので、従業員は近くの団地などに寝泊まりしていたが、浦東地域がロックダウンしたことで、これらの従業員も閉じ込められてしまった。
当初の発表ではロックダウン期間は4日間前後とされており、テスラは4月1日か2日には業務再開できると見ていたが、また新たな規制が敷かれ、それもかなわなくなった。
4月16日の夜、ようやく業務再開の許可が下ろされた。
上海臨港新片区の当局は、業務活動を支えるために工場に専任者を派遣し、会社の幹部とともに三日三晩にわたり準備を進め、テスラならびに仕入業者の社員8000人を工場に送り込むために、バスを何台も手配した。
職場復帰を果たした従業員は、毎日朝に抗原検査を、夜にはPCR検査を行い、コロナ終息まで帰宅は許されない。
宿泊施設がないので、会社から支給されマットや寝袋を使って夜を過ごした。ただ、シャワー施設や1日三食が提供されるほか、営業日には1人当たり最高で300元(約5682円)、休日も100元の手当が与えられた。つまり毎週1900元(約3.6万円)が別途手に入ることになる。
テスラは4月中に急速に生産を再開したが、結局1か月間での出荷台数はわずか1512台にとどまってしまった。
5月に入ってからもかなりの生産状況を維持し、5月16日からコロナ前のペースに戻すとの決定も下された。
ところが、雨漏りの影響からか仕入れ業者に感染が発覚し、5月9日からまた操業がストップした。
ここ数か月間で三度目の停産となってしまった。
(中国経済新聞 速水静)