5月25日午後、李克強総理は、各省、市、県の郷鎮幹部を集めて全国経済安定化オンライン会議を開き、また二つの記録が作られた。
第一、参加者は国務院の首相、副首相から地方の郷鎮幹部まで延べ10万人以上に上った。
第二、参加者が10万人を超えることは非常に稀なことである。
この会議はまた重要なメッセージを伝えた。新型コロナウイルスやウクライナ危機等、国内外の複数の要因によって、中国経済が存亡の危機に直面する中、中央政府から郷鎮レベルに至るまで一段階ずつ会議を開いて、中央政府の意向を伝える余裕がなく、一斉に伝わる方法をとるしかなかった。
なぜ今、10万人規模の大会が開かれたのか?
1. 2022年第1四半期のGDP成長率は、前年同期比4.8%となり、中国政府が目標としていた5.5%には遠く及ばなかった。第2四半期は、上海、北京等多くの地域で長期間に渡るロックダウンが実施されており、GDP成長率は2%前後に落ち込むと予想される。
2. 今年6月、過去最高の1076万人の大学生が卒業するが、その数は2021年に比べて167万人増加し、その内、約500万人の高校卒業者は含まれていない。インターネット企業、大手家電グループの美的集団などの製造業は、人員整理を進めており、上海市副市長の陳群氏は記者会見で、5月6日までに中国経済が最も発展している上海において、大学生の就職内定率が36%と過去20年で最も深刻な事態を迎えていると発表した。
3. 3月以来、各地方政府は全ての時間を新型コロナウイルス対策に割き、企業は生産を停止、都市部の経済と市民生活は止まり経済活動が疎かになった結果、中央政府が経済活性化の政策を実行できなくなった。こうした状況を解決するため、国家の焦点を再度経済に戻し、中国経済を救済するため、今回の10万人大会が開催された。
李克強首相は大会において、今年度第1四半期は各地の財政収入が大きく落ち込み、特に長江デルタ地域では、最大32%の下落となり、既にいくつかの省から国務院に借金の申込みが来ている。また発電量や運送量、新規融資がマイナスを記録しており、今回の大会開催が急務であったと述べた。
加えて、中国は経済大国であり、一度合理的な範囲から外れてしまうと、それを戻すために大きな代償を払わなければならないと指摘した上で、6月までに経済を安定的に上昇させるため、関係部門と各地方政府に対策を講じることを求めた。また国際機関が我々のGDP成長率を引き下げ、中には3%を下回るものもあるが、これでは失業率が持ち堪えられず受け入れられないとした。
続けて、李克強首相は、経済一辺倒にはならないと言ったが、経済を必要としない訳でわないと述べ、経済の発展は中国の全ての問題を解決する鍵であり、雇用の確保、市民生活の保証には経済発展が不可欠だと支持した。またコロナ対策の継続には財政的、物質的な保証がされなければならないとし、もし経済が合理的な範囲から外れると、長い間蓄積された矛盾やあらゆるリスクを伴う問題が露呈されることになり、経済が発展しないことが最大の障壁になると述べた。こうしたことを鑑み、企業と市場を守るため最大限尽力するとし、各地方政府は、たとえ財政難であっても、特に倒産の危機に直面している零細企業や個人事業主に対して、地方税だけでなく光熱費や家賃への補助など、あらゆる方法を模索し救済する政策を打ち出すよう求めた。
最後に、職場復帰と操業・生産再開に向けての最適化政策は、円滑な物流の保証、コロナ感染低リスク地域での通行制限の撤廃、不合理な高さ制限や料金の取り止め、国際路線を円滑にし外国企業の社員が便利に往来できるよう引き続き市場化、法治化、国際化を押し進めることで達成されると強調した。
5月23日に国務院は既に経済活性化政策の33項目を発表しており、26日から12省に使節団を派遣し政策の実施と支援に関する特別監査を行うとしている。
(中国経済新聞 山本博史)