中国のテレビ市場が不振に陥った二つの要因

2022/06/10 21:40

中国のテレビ業界にとって、2021年は苦しい年となった。売上台数は4000万の大台を割り込み、前年比13.8%マイナスの3835万台で、12年ぶりの低水準となった。規模も利益も思うような結果が出ず、2021年の売上高は2020年比でわずか6.6%増の1289億元で、メーカー各社とも苦境に陥っている。

こうした2021年の不振について、必然的および突発的な要因が挙げられる。表向きには、コロナの影響で世界的に需給が合わず、コスト増大といったものであるが、中国ではテレビはすでに頭打ち状態にあり、100世帯あたりの保有台数は2013年には115台以上、2021年には121.8台となっている。出生率の減少や不動産市場の後退を受け、業界内でも量の争いから生き残り争いに変わり、厳しい状況になっている。

また、娯楽の手段が乏しかった以前はできるだけテレビを楽しむようにしていたが、末端商品が多様化し、消費習慣が変化するにつれて、テレビ業界がさらに衰退していくと見られる。今は、スマートフォンやタブレットPCなどモバイル機器がふんだんにあり、エンタメの手段はいくらでもある。落ち着きのない社会で時間をかけてテレビを見ることは “コスパの悪い”楽しみ方であり、挙句に今の番組はまるで面白くなくなっている。若者はおろか、農村部のお年寄りでさえネットビデオを見るような状態で、家にあるテレビは年に数回程度しか出番がない。

こうした危機感をいち早く察知し、先手を打ったのが、中国のテレビ最大手「創維」の創業者である黄宏生氏である。

黄氏は2010年、自動車業界への参入を発表し、江蘇省南京で開沃新能源汽車集団を設立した上、南京金竜客車製造有限公司を吸収合併して、業務の柱をテレビから新エネ車にシフトした。今や自動車メーカーに生まれ変わり、テレビの危機をすり抜けたのである。

(中国経済新聞)