国美の創業者・黄光裕氏 出所後に迎える挑戦

2022/05/10 19:38

中国最大の家電量販店「国美」を立ち上げた黄光裕氏が、2021年に刑期を終えて現場復帰した。大変な期待が寄せられた国美は株価も急上昇し、黄氏はまた18か月間に及ぶ誓約書を定めた。

長年の服役を終え、53歳になっていた黄氏。1987年に北京で家電販売店の「国美」を立ち上げ、2004年に中国の長者番付トップになったが、2008年に不正取引や贈賄などで逮捕され、2010年に北京の中級裁判所より懲役14年の実刑判決および罰金6億元の支払いを命じられた。

10年以上前には中国の家電販売王と言われていたが、今は通販サイトが花盛りであり、リアル店舗は肩身が狭くなっていた。

黄氏の服役中は、復帰の日を待って夫人が国美を支えた。

出所後の黄氏はやる気十分だったが、時代や市場の移り変わりも目にした。リアル店舗が中心だった国美は赤字が続いていた。

現場に復帰した黄氏は、大胆な改革を始めた。

黄氏はおおむねお昼ごろに出勤し、深夜2時から4時ごろまで働いた。これに合わせて会社も、幹部陣がオフィスビルの34階で寝泊まりできるよう手配した。

国美は新事業の開拓に向け、2021年にアリババの幹部だった曹成智氏、胡冠中氏、丁薇氏の3人を迎え入れ、曹氏は小売り担当子会社の経営戦略・執行センターVPに、胡氏はCMOに、丁氏は通販サイト「真快楽」のCOOにそれぞれ就かせた。ただし、それからわずか1年で残ったのは丁氏のみとなっている。

退社したある元幹部は、「黄氏は幹部に容赦しない」と述べた。2021年に二度行われた管理職以上の会議で、黄氏は、「面接の時はいいこと言っておきながら、時期が過ぎても業績が出ない奴は早く消えろ」などと2時間近くにわたり幹部を叱責したという。

急遽採用された幹部も、軒並み同じような目に遭った。与えられる時間が短く、これまでの業務経験が生かせないうえ、会社の雰囲気も肌に合わないと言っている。

黄氏ついて幹部の多くは、「管理が細かすぎ」と見ている。「下が稼いだ金がある程度になれば社長にお伺いを立てなくてはいけない。普通はCEOクラスや所属長に移管するが」という。

新任の幹部が相次いで姿を消したことから、黄氏は改めて社内の重鎮を一線に配属した。

今年1月には、黄氏の妹で1991年に入社した黄秀虹氏が社長に就任した。また、ともに大ベテランである王波任氏がCEOに、李俊涛氏が副社長になった。李氏は勤務歴30年以上である。

黄氏は常日頃から、会社を成長させる切り口を探っている。とりあえずすべきことは赤字を食い止め、軌道修正の時間を稼ぐことである。このため「真快楽」を立ち上げたほか、デリバリーや酒造などの新事業も始めている。

国美は2021年、小売りの売上高が持ち直し、前年比30.4%の伸びで1468.7億元であった。一方で44億元の赤字を計上し、5年間で累積赤字が約200億元となっている。店舗の数は1年で774店増え、4200店近くに達している。

黄氏は2022年の黒字を目指すが、出費を一層抑えなくてはいけない。

社員によると、給料も賞与も下がり、今年1-2月の職能給も半額支給、それも4月になってから、という。

問題が山積している国美にとって、黄氏の現場復帰は朗報であるが、今は10年以上前とは違う。会社の再建は黄氏からすれば、単なる挑戦ではなく会社の存亡に関わるものである。

(中国経済新聞 李佳)