レノボ、北京市当局より業務改善指示受ける

2022/05/12 14:36

4月14日、北京市証券監督管理局が、レジェンド・ホールディングス(Lenovo)に対し、業務改善指示を下した。

これによると、定期報告や臨時報告の発表が遅れていること、買付説明書や定期報告で株式担保を発表していない子会社があること、営利目的とそうでないものの取引の仕切りが不鮮明で、非営利的な取引分や借り入れ情報が不正確であること、といった点についての改善を求めている。

当局側は、2017年9月にレノボがルクセンブルク国際銀行の株式89.94%分の取得に乗り出し、これによりヨーロッパでかなりの論議を招いたが、レノボは2018年1月までその進捗状況を発表しなかった、との例を挙げている。

レノボグループは元々、中国科学院が1984年に設立した、「民族企業」を自認するIT企業であったが、創業メンバーの1人で長らく社長を務めた柳伝志氏が出資率の変更を繰り返し、グループ全体が中国科学院から分離して、複雑な株主構成でありながら国内で未上場(香港でのみ上場)の巨大企業となった。

レノボに対して中国ではここ数年、柳氏を初めとする経営幹部が国の財産を横取りしている、会社の経営がブラックボックスのようで不透明である、などと批判の声が上がっている。

レノボは20世紀末に、中国で最も成功したIT企業の一つとなり、国民の「民族技術ブランド」を背負い込んでいた。ただその急成長は、政府系機関である中国科学院からの安定したオーダーで支えられていたのである。

創業間もない頃、政府系企業による購買で道を切り開いたレノボの製品は、各機関や団体による入札時の指定ブランドになっていた。これによってレノボは、利益や売上を生むチャネルを手にしたのである。

2004年にIBMのパソコン事業を12.5億ドルで買収したことは、「ダボハゼ商法」の典型例とも言われ、その後NECのパソコン事業も買収した。この結果、レノボは国際舞台で一躍有名になり、グローバル化を一気に進めてPC市場における中国の覇者となったのである。

しかし、こうした買収劇で身を肥やしておきながら、技術開発をおろそかにしていた。海外の会社での開発、国内での組み立て、サプライチェーンの統合、といった基本線であった。

レノボに対し、「成長が鈍い」、「転換に失敗した」、「スマホなど新事業に見所なし」、「落ち目のPC業務にしがみつき」、などといった批判が相次いでいる。過去3年間、グループの開発費用は年間売上高の約3%程度であり、一方でファーウェイは、2021年の開発費用が同じく年間売上の22.4%に達している。

レノボグループの楊元慶CEOは、2021年の年次総会で、向こう5年間で開発に1000億元をつぎ込むと語ったが、実際にはたった3億元でチップの会社「鼎道智芯」を立ち上げたに過ぎなかった。

民族的感情が極めて強い中で国際化が進む中国の競争環境にあって、レノボはやり玉にあげられた。2020年度における幹部陣27人の給与は、年間利益額のほぼ10%にあたる10億元(約193億円)近くに達した。6億人が月々の収入1000元(約1.9万円)程度にあえいでいるこの中国社会で、不満感情が湧きおこらないはずがない。

ITを拠り所としているレノボは、苦境に立たされ始めている。柳伝志氏の娘の柳青氏が社長を務めている配車アプリのディーディーが、中国の個人情報や走行経路などをアメリカに提供したとして中国政府に業務改善を勧告され、やむなくアメリカから撤退したことで批判を浴びている。

柳伝志氏と柳青氏は5月の連休中、ブログで半年以上前の内容をひそかに削除し、ファードアウトをはかった。

レノボは5月7日、当局宛てに業務改善報告を提出した。深く反省し、不確かな発表などを行わないなどと指示通りの改善を果たしたと表明した上、各業務を正常に進めており、経営は安定し流動性もまずまずと強調している。

(中国経済新聞 山本博史)